BRASS / 真鍮





金色の見た目をした金属といえば、金を思い浮かべる人が多いはず。
なんといっても金属を代表するものだし、そもそも金属かどうかなんて関係ないぐらい特別なもの。

それは全天における北極星のようであり、真冬の一等星シリウスのように輝きを放ち続ける存在。

金は紀元前3000年代にはすでに使われ始めていたともいわれ、装飾品や貨幣として世界中で重宝されてきた。
精錬や合成をする必要がなく最初から自然界にそのまま存在し、採掘して加工を施しても、素材自体の劣化や経年変化がほとんど無い。
つまり、ずっと美しい見た目のままという奇跡のような素材。


ところで、同じように金色の見た目をした金属にブラスがある。
ブラスとは銅と亜鉛を混ぜた合金のことで、いわゆる真鍮(しんちゅう)と呼ばれるもの。
比較的安価な素材でありながら、見た目の良さや加工のしやすさもあって、日本では五円硬貨や仏具、ブラスバンドの金管楽器などでもお馴染みの、かなり身近な存在。
かつては金の代用品としてのイメージが強かったものの、今では生活雑貨をはじめ、様々なインテリアアイテムにも使われる人気の素材に。
それに殺菌・抗菌作用があるので、ドアノブや食器・カトラリーなどにもよく使われている。

ただ、その楽しみ方は金とはすこし趣きが違う。

ブラスは経年変化をしていく素材。
だから私たちにとってブラスは、日常の何気ないシーンに素朴な美しさをもたらしてくれる、暮らしを楽しむための大事なエッセンス。

ブラスは空気中の成分と反応するため、最初の明るい光沢は徐々にくすんでいき、色合いもすこしづつ濃いものへと変わっていく。
ブラス製品を使っていると、やがて深みのある鈍い光沢を放ち始めることに気付く。
それは金のもつ目のくらむような煌めきではなく、まるで長い時間をかけて光を内側に閉じ込めたような、落ち着いた艶めき。
その光は周りを圧倒するような派手な光彩ではなく、周りをやさしく包み込むキャンドルライトのような静かな灯火。

私たちの日々の暮らしにそっと寄り添ってくれる気取らない美しさを、ブラスは時間をかけてまとってくれる。

それに、銅の成分が錆びることによって出てくる、緑青(ろくしょう)の風合いも楽しみのひとつ。
日本でも古くから銅板屋根や社寺・大仏建築などで、緑青による経年変化の美しさと耐久性を大事にしてきた。
緑青のくすんだグリーンに覆われて、初めてその建築や物の完成をみるという美意識は、緑青色という色目が古来からあることでもその重要性がうかがえる。
もちろんカトラリーなどは、美しい金色の雰囲気を保つためにこまめに水気を拭き取るのもいいし、緑青が出てもさほど手間なく落とすことができる。
緑青が出たまま使っていても、表面の皮膜が内部の腐食を防ぐ役割をしてくれるし、人体にも無害なので特に問題もない。

ずっと変わらない美しさではなく、変わっていくことの美しさを教えてくれる、ブラスアイテム。

できれば、過ぎゆく時の流れを感じる喜びも、一緒に味わっていきたい。

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